PROFILE

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カントリーシンガーの坂本孝昭を父に、かつて吉田拓郎と共にエレックレコードの最初のフォークシンガーとしてスカウトされ、レコードデビューした母朱由美子の娘として生まれた東京出身のカントリーガール。
「父の娘」という言葉がある。この場合、ある程度名の知れた歌手を父に持った娘が、影響受けた父への思慕を契機として歌手となり、独自の世界を極めようとしている場合をいう。もっともそのあり方は多様で、父親への郷愁めいたナルシズムをすべての基準にする娘もいるだろう。また父親には言及せず、対象的な道を選択する娘もいるだろう。父親を受け入れるにせよ、回避するにせよ、覚悟が必要なこというまでもない。はたして愛江ちゃんはどうなのだろう。彼女のカントリーはおおむねクラシックカントリーだ。その点においては父親坂本孝昭、「ター坊」の郷愁めいたカントリー路線を踏襲しているだろう。加えて母親も元歌手となると、ことは複雑だというのが世間一般の娘の心境なのだろうが、現在に至るも精神的重圧に耐えかねて挫折したという噂も聞かなければ、辞めようと思ったこともないらしい。そんなことに頓着する素ぶり少しも見せない。むしろそうした環境を楽しんでいるかのようだ。きわめて楽天的なのだろう。
彼女のカントリーは成城学園大学OB津下紘次氏のThe Blue Strangersから始まった。2004年から4年間カリフォルニア在住、2008年帰国。The Country Messengersに参加の傍らソロ活動開始。銀座「ナッシュビル」、四谷曙橋「バック イン タウン」、赤坂「カントリーハウス」などのライブハウスに出演。2011年にはブルーグラスバンドThe Blueside of Lonesomeにも参加しながらナッシュビルでカントリーアルバム『SOMEDAY』録音(翌12年日本発売)。13年The Blueside of Lonesomeのミニアルバム制作、バイロン バーラインの「オクラホマ ブルーグラス フェスティバル」に参加。今年14年夏「FUJI ROCK」へ初のブルーグラスバンドとして参加。今秋再びオクラホマへ。帰国後セカンドアルバムの発売が予定されている。(※現在発売中)
現在の彼女はブルーグラスにも意欲を見せているようだが本領はカントリー。アルバム『SOMEDAY』はその証。数ある曲の中でも”Here Comes My Baby Back Again””I’ll Take Care Of You””You Ain’t Woman Enough””We’ll Meet Again”はこれまでの日本のカントリーシンガーにはうたい得なかった本場物の醍醐味が堪能できる。
坂本愛江はオヤジ「ター坊」が若かりし頃、光り輝いて見えた「夢の国」アメリカのカントリーソングへの憧れと幻影を、いま実現しようとしているかのようだ。

紹介文:島田耕

〜2014 Vol.26 COUNTRY GOLDより〜